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【知の先端】奈良先端科学技術大学院大学教授・高橋淑子さん(産経新聞)

 □体組織構築の“司令塔”解明

 ■細胞の切断・整形導く がん転移の仕組み解明も

 私たちの体は約60兆個の細胞でできている。たったひとつの受精卵が多様な組織に分化していく発生・分化の段階では、細胞はさまざまに変化・移動して組織や個体が構築される。奈良先端科学技術大学院大学の高橋淑子教授は昨年、骨や筋肉の元になる組織で「エフリン」というタンパク質が細胞の切断と整形の司令塔の役割を果たしていることを突き止めた。この成果は、再生医療の実用化やがん転移のメカニズム解明に役立つ可能性があるという。(伊藤壽一郎)

                   ◇

 ≪ニワトリ胚≫

 「発生・分化のとき、細胞は一瞬たりとも同じ形をしていない。単純だった胚(はい)がみるみるうちに、いくつもの小組織へと変化していく。ここにはたくさんのミステリーがあり、それらを解いてみたいと思った」

 広島大学理学部の学生時代は、ワンダーフォーゲル部の活動に打ち込み、いかに授業に出ないで単位を取るかばかり考えていた。だが、「授業で触れた細胞の美しさにしびれてしまって」京都大学大学院へ進学。発生生物学の権威である岡田節人(ときんど)教授(現名誉教授)のもとで、わが国初のES細胞(胚性幹細胞)の解析を通じ、細胞分化の研究に打ち込んだ。

 学位取得後、1988年に仏国立科学センター発生生物学研究所の客員研究員に。割り当てられたテーマは「ニワトリ胚」の発生に関する研究で、この出合いが大きな転機となった。

 「ニワトリ胚は、実験動物の中では特例中の特例といえる存在。大きいから卵の殻に穴を空けるだけで、生きたまま移植手術や遺伝子操作の影響を詳細に観察できる」。ミステリーを解く鍵が見つかる可能性にすっかり魅せられ、帰国後もニワトリ胚の研究を続けた。

 ≪はさみの正体≫

 ヒトやニワトリなどの脊椎(せきつい)動物は、胚から分化する過程で、背骨や骨格筋の元になる「体節」というひとつながりの細長い組織を形成する。これがいくつかの決まった部分で切れて小さな分節となり、骨や筋肉に変化していく。

 体節はなぜ切れるのか。高橋さんはまず、切れる部分の細胞を、切れないはずの場所に移植した。すると、体節は移植した部分で切れた。

 「切れる部分に、指令を出す物質があるはずだ」

 今度は、切れる部分だけに存在する物質を調べ、それらを作る遺伝子を1つずつ、切れない部分に導入。ニワトリ胚だからこそ可能な実験だった。何日も徹夜して、20種類の物質について検証した結果、エフリンが作られたときだけ体節が切れることが分かった。

 「はさみの正体は、お前やったんかい!」。実験室で思わず叫んでいた。

 現在、iPS細胞(人工多能性幹細胞)などによる再生医療の研究が進んでいるが、「エフリンによる制御が実現すれば、再生中の組織を任意の場所で切断するなど、患者に合わせた組織形成が可能になるだろう」と高橋さんは話す。

 ≪細胞の変化も制御≫

 エフリンの役割は、はさみだけではなかった。体節の細胞は、不定形で組織内を動き回る「間充織(かんじゅうしき)細胞」だが、切断面近くの細胞は、規則的に並んで組織の表面を滑らかに覆う「上皮細胞」に変化していた。組織形成と細胞の形態変化を同時にコントロールしていたのだ。

 さらに、エフリンが働いた切れ目近くの細胞は血管の元になる細胞に変化。血管が作られるべき場所へ引き寄せられるように大移動し、血管を形成することが分かった。

 これらの発見の意義は大きい。消化器系のがんは、胃腸の内側の上皮細胞が腫瘍(しゅよう)化し、それが間充織細胞に変化して移動し、血流に乗って全身に転移する。

 「細胞の挙動という点からみると、ニワトリ胚でエフリンが起こした現象とよく似ている。エフリンを手掛かりに、がん転移のメカニズムも解明していきたい」

                   ◇

 【history】

 ■細胞の声が聞こえるようになった

 仏国立科学センター発生生物学研究所では、仏科学界の重鎮と呼ばれる女性研究者、ルドワラン所長から“鉄拳教育”を受けた。

 「実験結果を報告したり研究テーマを相談しても、常に『つまらない』と一蹴(いっしゅう)された。百戦百敗だった。けれど、百回挑んだことが自分の成長につながった」

 ニワトリ胚の研究に没頭した同研究所で、分化過程の脊椎と周辺組織の“コミュニケーション”に興味を持った。「細胞は実に美しく分化し組織をつくっていく。これは脊椎と筋肉系、骨系の細胞がなにか話をしてるんちゃうか?」

 細胞の声が聞きたい。そんな思いで研究を続けるうち、細胞のふるまいは人間社会と似ていることに気がついた。「細胞は変化し、体内を旅し、出合い、そして死ぬ。まったく同じですね」

 今では細胞の声が聞こえるようになった。「そう言うと、まわりの人は困った顔をするけれど、ニワトリ胚は、ちゃんと答えを聞かせてくれました」と笑う。

 細胞がささやき合う声とは、発生生物学の古典的テーマである組織間相互作用にほかならない。「それを一生かけて遺伝子レベルで解析していきたい」

                   ◇

【プロフィル】高橋淑子

 たかはし・よしこ 昭和35年6月、広島市生まれ。昭和58年広島大理学部卒業。63年京大大学院理学研究科博士課程修了、渡仏して仏国立科学センター発生生物学研究所客員研究員。米オレゴン大、コロンビア大の客員研究員、北里大理学部助教授などを経て、平成10年奈良先端科学技術大学院大助教授、17年教授。理化学研究所発生・再生科学総合研究センターチームリーダー、総合科学技術会議専門委員なども務める。22年、第30回猿橋賞受賞。

 ■趣味 小学校から続けている合唱。現在は大阪フィルハーモニー交響楽団の合唱団に所属し、年4回ほど舞台に立つ

 ■感動した1冊 司馬遼太郎さんの「竜馬がゆく」。発想力こそが科学に必要なオリジナリティーだと思う

 ■研究がうまくいかないとき チャイコフスキーやベートーベンの気持ちになって「彼らも最初は見向きもされなかった」と自分を慰めたり、座右の銘であるワンゲル部歌の一節、「道なき道は、わが人生」をつぶやく

 ■若手研究者にひと言 自分の殻を破ってみよう。がむしゃらにやってみよう。ただし、研究は楽しいけれど、楽しいと楽(らく)はちゃうでぇ

 ■家族 両親と兄。現在は奈良市・東大寺の近くで1人暮らし

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青木氏後継に長男の一彦氏=参院島根で自民県連(時事通信)

 自民党島根県連は17日、選挙対策委員会を開き、夏の参院選の島根選挙区に、体調不良で出馬を断念した青木幹雄前参院議員会長の長男で秘書の青木一彦氏(49)を擁立することを決定した。18日にも党本部に公認申請する。
 青木氏の突然の不出馬を受け、県連は公募を行わず、話し合いにより全会一致で一彦氏擁立を決めた。この選考過程について、洲浜繁達県連幹事長は松江市内で記者会見し、「今日までの青木議員への厚い支持を継続、拡大できる一彦氏が最適任」と説明した。 

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【金曜討論】全国学力テスト 澤田利夫氏、梶田叡一氏(産経新聞)

 先月20日に4回目で初の「抽出方式」による学力テストが実施された。民主党政権が「競争排除」などを理由に方針を転換したものだが、自治体や学校側の関心は高く、参加率は7割以上に上った。抽出方式は続けるべきなのか。いずれも学力調査に精通している東京理科大の澤田利夫教授(嘱託)と、環太平洋大(岡山)の梶田叡一学長に聞いた。

                   ◇

 ≪澤田利夫氏≫

 ■「全員参加」は差別化の恐れ

 ●傾向調べるには有効

 --なぜ抽出方式を採用するべきか

 「目的によって、サンプル(抽出)調査か全数調査(全員参加方式)かを選ぶ必要がある。学力調査の目的は、学習指導要領の目標に照らして児童生徒の学習習得状況を把握し、今後の教育施策や指導改善に役立てること。傾向を調べたいのであれば、抽出が有効だ」

 --学力の傾向を調べる上で、全員参加方式に弊害はあるか

 「地域の中で学校や教師の序列化、差別化を生む恐れがある。学校で調査の準備対策が行われ、教師や校長の評価・人事に影響する可能性もある。もしそうしたことが起きれば、調査の信頼性自体が揺らぐ。また、全員参加方式では、1点2点が重要となってしまう」

 --今回、対象外の多くの学校も自主的に参加した

 「『学力テスト』が『実力テスト』と誤解されているのをよく表している。保護者とすれば、子供の順位を知りたいと思うのは心情だろうが、そもそも国語と算数(数学)だけで個人の優劣をつけ、全体の成績のように評価されてしまうことが適当なのか。個人の学力を試験する『テスト』は、各自治体などで独自にやった方がいい」

 ●1割でもデータ十分

 --3割という数字は妥当か

 「日本の1学年の児童生徒数を120万人程度とすると、3割は36万人ほど。文科省は今回、結果を都道府県ごとに公表するとしているが、都道府県別の傾向を調べたいのであれば、3割でも多すぎる。市町村別のデータ収集も見据えているのかもしれないが、厳格に抽出すれば、1割程度でも十分なデータを得ることができる」

 --今回の調査に問題点は

 「どのような基準で調査対象の学校が選ばれたか不透明だ。生徒数や公立私立、特別支援学校など、どのような要素、母集団からどれくらいのサンプルを取るか、あらかじめ厳格なルールを設定して調査を実施しなければ意味がない。また、正確な学習状況の把握のためには、毎年同じ問題を出した方がいい。今回の調査方法の選定に当たって専門家によるきめ細かい議論が行われたか疑問だ」

 --今後の改善策は

 「今回の調査は4月に実施されたが、答案の返却を前提としていることが一つの理由だろう。答案を返却するから結果が気になるし、序列化を招く。全体の結果だけをとりまとめて次年度に公表すればよい。小学6年まで、中学3年までの学習修得度の正確なデータを入手するという意味でも、調査は年度末の3月に実施してはどうか。また、調査にかけられる時間と比べ、調べたい学習範囲は膨大だ。問題を数パターン準備し、1つのクラスを分割して別々の問題を出すなどの工夫があってもいいだろう」(三品貴志)

                   ◇

 ≪梶田叡一氏≫

 ■「抽出」では個々の把握不能

 ○必要性は広く認識

 --今回、全員参加方式から抽出方式に変わったが

 「3割の抽出対象以外にも希望参加を認めたが、多くの市町村が自主的に参加し、結局は全国で約7割以上の子供たちがテストを受けた。この数字だけを見ても多くの市町村が学力テストの必要性や重要性を認識している。今回、国の予算削減などを理由に抽出方式になったが、やはり全員参加方式がふさわしい」

 --全員参加と抽出の違いは

 「そもそも学力調査についての大きな誤解があって、単なる統計をとるだけの行政調査だと思われている。学力調査は一人一人の子供の学力向上に役立てるという考えに基づいてできたものだ。学力というのは、どこの学校の、どこの先生の、どこの生徒の、というようにミクロの視点で見なければいけない。一人一人の生徒を指導して初めて学力のレベルが上がる。抽出方式だと、都道府県のレベルまでしかわからない。東京でも大阪でもそうだが、同じ都道府県の中でも実は地域によって学力に大きな差が存在する。市町村、学校、教室、生徒と細かいところまで把握することが何よりも重要だ。マクロの視点でお金と人を投入しても学力は決して向上しない。公立の小中学校を支えているのは市町村の教育委員会だということを忘れてはいけない」

 ○学力格差拡大が問題

 --全員参加方式だと序列化を生む可能性があるのでは

 「文部科学省も市町村別の成績公表に反対しているが、大阪など自治体によっては公表するところも出ている。私も序列化を心配していたが、社会が熟してきたのか、それほど大きな混乱はなかった。今でも賛否はあるが、むしろ、抽出方式を続けることで市町村レベルの学力が把握できずに、実質的な『学力格差』が広がることが問題だ。今回も、希望参加している市町村と、していない市町村があったが、希望参加しているところは学力が高く、教育熱心なところが多い。一番の懸念は、抽出方式によって本当の『学力格差』が見えなくなることだ」

 --今後、学力テストはどうなるのか

 「全員参加が望ましいが、今回のように抽出方式が続くなら、希望参加に対して予算的な優遇措置をできないか考えたい。現在は、あらゆる学習活動の土台となるという意味で科目も算数(数学)と国語の2教科だけだが、理科と社会を加え、中学生には英語も加えることなども検討すべきだろう。日本では1990年代に『ゆとり教育』が席巻し、教育の質が著しく劣化してしまった。今や、国際学習到達度調査(PISA)でもアジア諸国に後れをとっている。教育を再建したいという強い思いで進めていきたい」(丸橋茂幸)

                   ◇

【プロフィル】澤田利夫

 さわだ・としお 東京理科大数学教育研究所嘱託教授。昭和10(1935)年、岩手県生まれ、74歳。東京理科大大学院修了。国立教育研究所科学教育研究センター長、東京理科大教授などを歴任。国際教育到達度評価学会(IEA)ほかで多くの学力調査に携わる。教育調査に関する著書、論文多数。

                   ◇

【プロフィル】梶田叡一

 かじた・えいいち 環太平洋大学長。昭和16(1941)年、島根県生まれ、69歳。京都大学文学部卒。多面的な教育研究に力を注ぎ、大阪大学教授、京都大学教授、兵庫教育大学長などを歴任。今年4月から現職。第5期中央教育審議会副会長、学力テストの分析・活用に関する専門家検討会議座長。

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